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ご持参眼鏡で両眼でぎりぎり0.7。近くも遠くも見え辛くて、
当店で中近両用眼鏡を製作したお客様のお渡し時の会話。
「遠くも今までより見える(0.9位)し、近くもバッチリ。」と御満足。
「これの方が遠くが見えるから、より安心して運転できるね。」
と笑顔で言われた時は複雑でした。(;ω)
「メーカーは、運転用を念頭に設計していません。運転でのご使用はお止め下さい。」
さらに「私も『メーカー非推奨の使い方を推奨できません』」と改めてご説明しました。
これに対して、お客様の反論。
「免許がとれる見え方(視力)が得られるから、何の(法的)問題ない。」
「むしろ、今日掛けてきた眼鏡(0.7ギリギリ)よりも、
今受け取った(中近両用)メガネの方が、明らかに(0.9位)よく見える。」
「どう考えても、より安全で快適に運転できる眼鏡が良いのでは?
(メーカー・眼鏡屋の)立場も分かるけど。」
(私)「ご高察痛み入ります。」と大人の会話をしたこともございます。 (;´・ω・)
それでも、度数変化がしてあるレンズなので、全面が0.9ではなく、
使用中の0.7の眼鏡より見えない部分がありますので、
ご注意申し上げて、ご了承いただきました。 ハイ(;'∀')
【 当該お客様の状況説明 】
このお客様は、弱めの眼鏡を掛けていた為、下の写真の状況に類似していたと思います。
 | 上記のお客様の場合、 全部が0.7より、左図のように、 中近両用であっても、 上半分近くが0.7〜0.9になる感じです。 |
お客様の「単焦点眼鏡よりも、中近両用メガネの方が良く見える」と仰るのは、
今まで「弱めの眼鏡を掛けていた方」だからこそ。
私も全くその通りだと思います。(^-^)
私の経験では「『遠近両用』と『中近両用』の見え方の違いの区別がつかない方」や、
「その差を微妙、又は不都合を感じるほどでない方」が、
中近両用眼鏡で運転されやすいようとする傾向があると感じます。
適法かつ安全に、上手く使っている方は、現に存在するでしょうし、
私は存在の可能性を否定致しません。
かといって、メーカーが推奨していない以上、
それを加工する眼鏡製作者としては、推奨はできません。
- 難しい部分ですが、御理解頂ければと存じます。-
ただ、どうして運転できるという人がいるのか?
⇒私物の中近両用眼鏡を例にご説明しておこうと思います。
趣旨としては、中近両用メガネで遠方が見えていると仰っても、
遠近両用よりも見え方が限定される違いをお知らせし、ご注意とさせて頂きます。
【 中近両用メガネの各部での両眼 遠用視力の例 】
- 私の場合 -

私は左右とも遠視で、ほぼ完全矯正で作成。
(両眼での最高視力:1.2、製作加入度数:+1.50)
青丸の遠用部分と橙丸の近用部分で視力測定すると、
累進帯長に関係なく、両眼視力は「1.2」と「0.2」で同じ。
眼前の部分では、「0.9」と「1.0」で微妙に、両眼の矯正視力が異なります。
※ハッキリ見えるのではなく、認識できるといった感じです。
この時の矯正視力を数値だけで判断すると、免許更新が楽々クリアする状態ですが、
中近両用メガネの「1.2」の視力より、遠近両用の「1.2」の方がスッキリ見えます。
さらに具体的に言えば、「1.2」が見える範囲もピンポイントになります。
【 遠近より中近両用眼鏡は遠方の見え方が限定される】
- 具体的説明 -
私が「遠近両用」と「中近両用」の其々の眼鏡で、渋滞の中の1台を中心に見た時、
「1.2」の見え方になる面積をイメージ化しました。

目は小刻みに動いて視野を広げるので、実際はもう少し広がりますが、
それでも水平方向の見える「1.2」の範囲が、遠近両用レンズの方が広いです。
もちろん中近両用の黄色の枠より外も、「1.2」以下の状態で見えます。
ただ、面積的に狭くなるのは、これでご理解頂けたと思います。
加えて、注意して頂きたいのは、
「遠方矯正の最高視力があまりでない方」や
「中近距離に特化した度数設定をした方」等では、
元の遠方矯正視力が低く(例:0.7)、眼前部分の矯正視力はより低く(例:0.5)、
そもそもの適法(0.7)状態の視力を得られなくなる場合もあります。
これら以外の理由でも、十分な遠方視力が得られない可能性があるので、
メーカーも運転用に推奨しないのではないでしょうか?
眼鏡レンズはその目的ごとに設計に特徴があります。
『 中近両用レンズは、中間距離の仕事に特化した設計 』のレンズで、(^-^)
『中近両用レンズは、運転用に設計されていない 』ので勧められません。
運転は用途にあった、『 適法・かつ安全に運転できるメガネ 』を、私は推奨致します。
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